投稿日:2025.11.06 最終更新日:2025.11.06
【内視鏡医が教える】「大腸ポリープ」と「大腸がん」の違いは?早めの検査が重要な理由まで解説!
健康診断を受けて「大腸ポリープがある」と言われたとき、「これって癌になるの…?」「癌とどう違うの?」と不安になったという方は多いかもしれません。
結論からお伝えすると、大腸ポリープと大腸がんは正式には“別のもの”です。ただし、ポリープの中には将来がんに進む可能性があるものも含まれます。
この記事では、大腸ポリープとがんの明確な違い、がん化のリスク、そして「早期発見すれば怖くない」理由を、内視鏡専門医の立場から分かりやすく解説します。
- 大腸ポリープと大腸がんの違い
- ポリープががんになる確率とかかる期間
- 内視鏡検査が必要な理由と、検査で何がわかるか
- 当院の「痛くない・苦しくない」検査の工夫
青木内科・眼科 青木 洋一郎
総合内科専門医/日本消化器病学会専門医/日本内視鏡学会専門医。日本人の2人に1人が「がんになる」と言われる時代に、早期発見の重要性を知ってもらいたいという思いから「痛くない内視鏡検査」を確立。
そもそも:「大腸ポリープ」と「大腸がん」は何が違う?

医学的には、大腸ポリープは「良性の腫瘍」、大腸がんは「悪性の腫瘍」です。つまり、両者は別のものです。違いを表にまとめると、以下のようになります。
| 項目 | 大腸ポリープ(良性) | 大腸がん(悪性) |
|---|---|---|
| 性質 | 良性の腫瘍 | 悪性の腫瘍 |
| 命への影響 | 直ちに命を脅かすものではない | 放置すると生命に関わる |
| 転移 | 転移しない | 他の臓器に転移する可能性あり |
| 治療方法 | 内視鏡で切除 | 早期:内視鏡切除 進行:手術・抗がん剤 |
| 予防 | 定期的な検査と切除で予防可能 | ポリープ段階での切除で予防可能 |
それぞれについて、もう少し詳しく見てみましょう。
大腸ポリープ=“良性”の腫瘍
大腸ポリープとは、大腸の内側の粘膜からいぼ状に盛り上がってできた“良性の腫瘍”です。形は丸っこく、小さなキノコのように見えることもあります。
「腫瘍」と聞くと怖いかもしれませんが、良性なので命を脅かすものではありませんし、急に大きく広がったり、すぐに他の場所に転移したりすることもありません。
痛みもなく、本人は気づかずに過ごしているうちに大きくなるケースが多く、健診などで偶然見つかることが大半ですが、良性だからといって安心というわけではありません。
すべてのポリープに言えることではありませんが、大腸ポリープには将来がんに進む可能性があるものもあります。つまりポリープは「がんの芽」とも言えるわけです。
大腸がん=“悪性”の腫瘍(転移の可能性あり)
一方で大腸がんとは大腸内壁(粘膜)の細胞が異常を起こし、勝手に増え続ける悪性の腫瘍です。
大腸がん細胞は周囲の組織へ浸潤(しんじゅん)して、大腸の壁を越えて外にも広がり、進行すると血液やリンパの流れに乗って肝臓や肺など別の臓器に転移することもあります。
このように周囲へ広がる性質が、”良性のおでき”であるポリープとの大きな違いです。
もっとも、大腸がんでもごく早期(ステージ0〜I)で発見できれば、内視鏡でポリープ状の病変を切除して完治を目指せます。
しかし進行すると、がんは大腸の壁を深く破り、他へも広がるため、進行度合い(ステージ)によっては外科手術で腸の一部を切除したり抗がん剤治療を行ったりする必要が出てきます。
大腸ポリープにはどんな種類がある?
「ポリープとがんは別もの」と聞いて、少し安心されたかもしれませんが、ポリープには大きく2つの種類があり、その種類によってがん化するリスクが異なります。
詳しく解説していきます。
非腫瘍性ポリープ(がん化しづらい)
まず、がん化の恐れが比較的少ない「非腫瘍性ポリープ」とは、炎症性・過形成性・過誤腫性ポリープなどが該当します。
これらは腫瘍ではなく、炎症のあとにできた隆起(炎症性)や、加齢に伴う粘膜の盛り上がり(過形成性)です。
基本的に悪性化するリスクはほとんどなく、非常に大きいものや多数できる遺伝性のケースを除いて治療の必要もありません。
ただし、見た目だけで腫瘍性か非腫瘍性か100%判別するのは難しいため、内視鏡医は必要に応じてポリープを切除し、組織を詳しく調べます。
腫瘍性ポリープ(がん化の可能性あり)
腫瘍性ポリープとは、腺腫(せんしゅ)が代表的ながん化リスクがある良性腫瘍です。
大腸ポリープ全体のおよそ80%がこの腺腫に分類され、放置すると悪性化して大腸がんに進展するリスクがあります。
ポリープが大きくなるほどリスクは上昇し、特に直径10mm超の腺腫ではがん化率が高くなります。
腺腫は良性とはいえ、自分でどんどん大きくなり、細胞自体が悪くなって最終的にがんになります。増殖のブレーキが壊れた状態で、放っておくと、いずれ”悪い細胞”=がん細胞に置き換わるのです。
ポリープががん化するまでの期間は5〜10年
腺腫性ポリープ(腫瘍性)から大腸がんになるまでには、一般に5年以上〜10年程度かかります。
数ミリの小さい腺腫が数カ月でがんになることは考えにくく、定期的に検査を受けてその間に発見・切除すれば、がんは予防することができます。
ポリープが見つかってもすぐパニックになる必要はありませんが、放置すれば5〜10年後にがんに進む可能性はあるため、この猶予期間のうちに対処しておくのが重要です。
【院長コラム】大腸がんは「ポリープ時の切除」で9割以上が完治可能!

大腸がんは日本の死因の上位を占める疾患ではありますが、早期発見して適切な治療を行えば、9割以上完治することが可能です。
これはなぜかというと、先ほど解説したように、大腸がんは「大腸ポリープ→大腸がん」の流れで進行します。つまりポリープの段階で切除してしまえば、がん化する前に切除できますし、早期であればがん化してしまった後でも完全に切除することが可能なのです。
それでも日本における死因が高いのは、決して日本の医療レベルが低いからではありません。そもそも「大腸検診を受けないこと」こそが、大腸がんによる死因が多い要因のひとつとなっているのです。
ですので特に50歳以上の方には、定期的な大腸カメラによる内視鏡検査を受診いただきたいと思っています。
大腸がん予防に内視鏡検査が必要な理由とは?
がん化するポリープがあることは分かったけれど、症状がないならどうやって見つければいいの?
その答えは、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)です。ポリープやごく早期のがんを発見できる、最も確実な方法についてお話しします。
そもそも:「早期ポリープ」や「早期がん」は症状がない
大腸がんは初期のうちはほとんど症状がありません。ポリープも同様で、小さいうちはまったく自覚症状がないのが普通です。
たとえば”血便”は大腸がんの代表的な症状ですが、自覚症状が出る頃にはかなり進行しているケースが多いので、症状の有無を当てにするのは危険です。
「お腹が何ともない=がんもポリープもない」とは限りません。
無症状のうちに見つけるには、検査を受けるしかありません。実際、早期の大腸がんを発見できる唯一の方法が内視鏡検査(大腸カメラ)だと言われています。
内視鏡検査なら、粘膜の状態を直接観察できるため、小さなポリープや早期がんも見逃しません。
ポリープの段階で見つかれば、その場で切除することで、がんの発生を未然に防げます。
便潜血検査だけでは“見逃す可能性”が高い
会社の健康診断などで行われている「便潜血検査」(検便)ですが、この検査は完璧ではありません。すでに大腸がんができているにもかかわらず陰性と判定されることで見逃されるケース(偽陰性)が珍しくないのです。
便潜血検査は、がんがある程度進行して出血している場合には有用ですが、早期のがんやポリープだと出血量が少なく反応が出ないことが多々ありますし、逆に大腸がんがあるのに血液の付着した部分をうまく擦れなかったことで陰性になってしまうケースもあります。
特に小さなポリープではほとんど出血を伴わないため約20%未満の確率でしか便潜血検査に引っかからないとされています。
つまり検便が陰性でも100%安心とは言えないということです。
「陰性=異常なし」と過信して放置せず、確実な診断と予防のためにも内視鏡検査を受けてください。特に、50歳以上の方や家族歴がある方は、症状がなくても内視鏡検査を受けることが推奨されています。
当院の「痛くない・苦しくない」大腸カメラについて

「内視鏡検査は痛くて苦しい」というイメージや経験から、受診をためらっている方も多いのではないでしょうか。
当院では、皆さまに安心して検査を受けていただくため、様々な工夫を凝らしています。
楽に受けられる3つの工夫
当院では、患者様の負担を最小限にするため、以下の3つの工夫を取り入れています。
1. 鎮静剤の使用で、眠っている間に検査
検査は麻酔を投与して行うため、ほとんどの方が眠っている間に検査が終わり、痛みや不快感を全く感じることなく、リラックスして検査を受けていただけます。
実際に当院で大腸カメラを受けていただいた患者様からも「こんなに楽だとは思わなかった」というお声をいただいています。
2.「軸保持短縮法+水浸法」でお腹の張りを軽減
大腸カメラでよくあるお腹の張り感や痛みは、内視鏡によって腸管が伸ばされた時に感じるものです。
そこで当院では自然なままの腸管の状態で、無理に伸ばすことなく内視鏡を挿入する「軸保持短縮法(じくほじたんしゅくほう)」を採用しています。腸管に無理な力を加えないため、内視鏡挿入時の痛みを大幅に減らすことができます。
加えて当院では大腸内視鏡検査で空気の代わりに少量の水を注入して、腸管をふくらませずに内視鏡スコープを挿入する「水浸法(すいしんほう)」という検査法を行っています。
水を使うことでスコープの滑りが良くなるのはもちろん、腸管を無理に伸ばしたりひねったりする必要がなくなるため、検査時の痛みや検査後の腹部膨満感を大幅に軽減できるのです。
当院では高度な技術と最新の設備により、腸管に負担のかけない「軸保持短縮法+水浸法」を組み合わせ、内視鏡検査の負担を大幅に軽減することが可能となりました。
3.検査準備はご自宅でリラックスしながら
大腸カメラでもっとも大変なのが、下剤を飲んで腸の中をきれいにすることです。当院では、この準備をご自宅で行っていただけます。
事前の診察で、下剤の飲み方や食事の注意点などを詳しくご説明し、専用のキットをお渡しします。リラックスできるご自宅で準備をしてからご来院いただけるため、精神的な負担も少ないと好評です。もちろん、院内にもプライバシーに配慮した専用個室をご用意しており、ご希望に合わせてお選びいただけます。
検査結果を「覚えて帰る」ための工夫
当クリニックでは麻酔検査はもちろん、検査後の「麻酔拮抗薬」も“当クリニック負担”で行っています。
「麻酔あり」で大腸カメラを実施した場合、リカバリー室で休憩後に検査後の説明を行いますが「逆行性健忘(検査前の記憶を思い出せなくなること)」が生じることがあります。
一見すると意識は覚醒しており、会話もしっかりできる状態ですが、あとで「医師からの説明を十分に思い出せない・覚えていない」状態になります。これは麻酔薬の効果が残っている場合に起こります。
しっかりと検査を受け、その結果までしっかり聞いて欲しい。それこそが我々医師の務めだと思い、麻酔拮抗薬の処方までを検査治療として実施しています。
麻酔拮抗薬は高価かつ保険適応外であるため「当医院の負担」で行います。精神科薬・眠剤を常用されている方には投与できません。
ポリープはその場で日帰り切除できる
検査の際に切除可能なポリープが見つかった場合は、その場で切除(日帰り手術)が可能です。改めて入院する必要がなく、一度の検査で治療まで完了できるため、患者様の身体的・時間的な負担を大きく軽減できます。

大腸カメラで大切なことは、癌化の危険性がある腫瘍性ポリープだけを確実に発見し切除することです。癌化することのないポリープ(非腫瘍性ポリープ)を治療する意義はありません。
大腸カメラは「ポリープを切除したか」で大きく費用が変わります。つまり「ポリープ切除を行ったか」によって患者様のご負担が大きく変わるということです。無駄な治療を行わないことは患者様の経済的なご負担を減らし、医療費を削減することで世界に誇る国民皆保険制度の持続可能性に寄与すると考えています。
腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープを正確に鑑別し、確実に腫瘍性ポリープのみを切除することは、内視鏡医に求められる必須の技術です。そして、検査あたりの腫瘍性ポリープ発見率(ADR;腺腫発見率)は、内視鏡医が実施する大腸カメラの精度を測る重要な指標とされています。
当クリニックでは「ADR(腺腫発見率)47%」の診察実績を踏まえて、患者様の負担を極限まで減らす大腸カメラ(内視鏡検査)を実施しています。
確かな技術と高い精度の安心な内視鏡検査で、大腸がんで苦しむ方を一人でも減らしたいと心から思っていますので是非お気軽にご相談ください。
米国における2024年推奨値「ADR(腺腫発見率)」:35%
大腸カメラの検査費用は?
症状がある場合や、検診の結果で陽性となった場合の精密検査には、健康保険が適用されます。3割負担の場合の費用目安は以下の通りです。
- 観察のみの場合:5,000円〜7,000円前後
- ポリープを切除した場合:20,000円〜30,000円前後(ポリープの大きさや数によります)
鎮静剤の使用などによる追加費用はいただいておりません。また、ポリープ切除は手術に該当するため、ご加入の医療保険から給付金が受け取れる場合があります。
上記はあくまで目安です。詳細はお気軽にお問い合わせください。
大腸ポリープが癌になる前に内視鏡検査を受けましょう
この記事では、大腸ポリープと大腸がんの違いについて解説してきました。
ポリープは良性で今すぐ害がない一方、腺腫という種類のポリープは5〜10年かけてがんに進む可能性がある。これこそが大腸がん予防の核心です。
裏を返せば、その猶予期間に内視鏡検査で発見し切除すれば、がんを防げるということです。
記事のポイント
- 大腸ポリープ(良性)と大腸がん(悪性)は別ものだが、一部のポリープ(腺腫)はがんに進む
- がん化まで5〜10年の猶予があり、その間の発見・切除で予防可能
- 早期ポリープは無症状で、便潜血検査では見逃しやすい
- 内視鏡検査なら発見と同時にその場で切除できる
- 当院では静脈麻酔・高度な技術・自宅下剤で負担を軽減
当院の内視鏡検査は静脈麻酔を使って眠っている間に終了します。
軸保持短縮法と水浸法で痛みや張りを抑え、平均挿入時間5分、盲腸到達率99%以上と高い技術力で、岐阜市の大腸がん検診で最多の実績を持っています。
今このタイミングで行動すれば、将来の大腸がんは防ぐことができます。少しでも大腸がんの不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

