投稿日:2025.11.06 最終更新日:2025.11.06
【よくある質問】大腸がん発症リスクは“遺伝”で決まる?癌発症のウワサに院長が回答!
ご家族に大腸がんが見つかり「自分も同じ病気になるのではないか」と不安な気持ちでこのページを開かれたのではないでしょうか。
まず結論からお伝えすると、大腸がんの発症に遺伝が関わることは“あります”。
ただし、過度に恐れる必要はありません。適切な時期に検査を受ければ、その不安は解消できます。
この記事では、大腸がんと遺伝の正しい関係、ご自身のリスク、そして不安を解消するための確実な方法である「内視鏡検査」を、専門医の立場から解説します。
- 大腸がんと遺伝の医学的な事実
- 遺伝を疑うべき家族歴のサイン
- 不安を解消する確実な方法(内視鏡検査)
- 当院で受けられる「痛くない・苦しくない」検査の詳細
青木内科・眼科 青木 洋一郎
総合内科専門医/日本消化器病学会専門医/日本内視鏡学会専門医。日本人の2人に1人が「がんになる」と言われる時代に、早期発見の重要性を知ってもらいたいという思いから「痛くない内視鏡検査」を確立。
【結論】大腸がんは発症率は「遺伝で上がる」
結論としては、大腸がんの発症に遺伝が関わることはあります。しかし、その割合は決して高いものではありません。
ここでは、大多数を占める遺伝ではないケースと、遺伝が関わるケースについて解説します。
大腸がんの「約8割」は遺伝と無関係
大腸がんの約70〜80%は、遺伝とは関係なく発症する「散発性大腸がん」です。
このタイプは、家系に関係なく誰にでも起こり得ます。主な原因としては、以下が知られています。
- 加齢(特に50歳以上)
- 食生活・肥満
- 過度な飲酒・喫煙
- 慢性的な炎症性腸疾患
ちなみに、大腸がんを罹患した家族が複数人いたとしても、遺伝性ではなく散発性大腸がんだったという場合もあります。
若くして発症しやすく、他臓器でも発がんする遺伝性のものとは異なり、散発性は高齢者中心で、大腸以外のがんは特に連動しないという点が特徴です。
特定の遺伝子が関わる「遺伝性大腸がん」とは
一方で、親から受け継いだ特定の遺伝子変異によって生じる「遺伝性大腸がん」もあります。
遺伝性大腸がんとは、がんの発生を防ぐ遺伝子(がん抑制遺伝子)に生まれつき異常があり、通常より若い時期からがんになりやすい体質を指します。
とはいえ全大腸がんの約5%と割合としては少ないです。「大腸がんは遺伝するのか?」という問いの正確な答えは「一部は遺伝しますが、ほとんどの場合遺伝ではありません」となります。
一見遺伝性に思えたものの、20〜30%は「家族集積性」とされるケースも少なくありません。
これは、家族に大腸がん患者が複数いるものの、明確な遺伝形式ではなく、家族で同じ生活環境・食習慣を共有することなどからリスクが高まった可能性があるものです。
代表的な「遺伝性大腸がん」について
遺伝性大腸がんの代表例としては、以下の2つが挙げられます。
家族性大腸腺腫症(FAP)
大腸がん全体の1%未満と希少ですが、常染色体優性遺伝により起こる疾患で思春期〜20代のうちに無数のポリープ(多い人だと5,000個以上)が大腸に発生します。
放っておくとほぼ100%大腸がんになるため、予防的に若いうちから大腸を切除する手術が必要です。
大腸以外にも、十二指腸や胃にポリープができたり、デスモイド腫瘍といった良性腫瘍が体中に生じたりすることも知られています。
リンチ症候群
全大腸がんの2〜5%程度と遺伝性大腸がんの中では多いタイプの疾患で、常染色体優性で遺伝し、子供には50%の確率で遺伝します。
比較的若い年代(40代以下)で発症しやすく、大腸以外のがん(子宮体がん・卵巣がん・胃がん・小腸がん・胆道がん・膵がん・腎盂尿管がん等)も家系内に多発するのが特徴です。
大腸に関しては、右側の結腸(盲腸や上行結腸)にできやすい傾向があります。
遺伝性大腸がんを疑うべきサイン
では、どのような場合に遺伝性大腸がんの可能性を考えた方がよいのでしょうか。
ご自身の家族や親戚の状況を思い浮かべながら、以下のサインに当てはまるものがないか確認してみてください。
1.若い年齢(50歳未満)で発症した家族がいる
50歳未満で大腸がんを発症した近親者(家族)がいる場合、遺伝性大腸がんが考えられます。
特に40代未満で大腸がんを発症した場合は、通常の散発性がんではかなり稀なケースです。
医学的にも「50歳未満での大腸がん発症」は、リンチ症候群の診断基準の一つとして考えられています。
2.大腸がんになった家族や親戚が複数人いる
50代以降に発症した場合でも、家族や近い親戚に複数人大腸がん患者がいる場合は注意が必要です。
特に親子2代にわたって、または兄弟2人とも、二親等内に2人以上いるケースは、遺伝性を疑います。
3.大腸がんとは別に以外のがんにも罹った家族がいる
家族に大腸がん以外の特定のがんが混在している場合も要注意です。
特に子宮内膜癌(子宮体がん)や卵巣がん、胃がんを併発した場合はリンチ症候群が疑われます。
【院長コラム】兄弟が発症している場合、リスクが「2〜3倍」まで高まる

ここまで「遺伝とがんの関係」について解説しましたが、遺伝子というのは複雑で、
- 誰が(祖父母、両親、兄弟など)
- いつ(どの年齢で)
- どんな癌を発症しているのか
上記のような条件によって、その発症率は大きく異なります。
そして第一近親者(親・兄弟姉妹)に大腸がん患者がいる場合は、リスクは2〜3倍に高まるというデータがあります。
これは遺伝性に限らず「家族歴一般のリスク」で、普段の私生活や食生活、生活リズムも影響していると考えられています。「家族に患者がいる」ということ自体がより注意が必要な状態であることを示しています。
なお、これらに当てはまるからといって、必ず遺伝性というわけではありません。
複数の条件を満たす場合に、専門医への相談を検討することが推奨されます。
大腸がんの早期発見には「内視鏡検査(大腸カメラ)」が重要
ここまで遺伝的リスクを解説してきましたが、もっともお伝えしたいのは、どのようなリスクをお持ちの方でも「大腸がんは早期発見すれば怖くない」ということです。
そのために不可欠な内視鏡検査の重要性についてお話しします。
大腸がんは早期発見で防ぐことができる
大前提、大腸がんは「予防が可能ながん」です。
大腸がんは多くの場合、ポリープ(腺腫)という良性腫瘍の段階を経て生じるため、がんになる前段階のポリープのうちに発見・切除してしまえば未然に防げるものなのです。
これが、ポリープの段階で切除することがもっとも有効な予防法とされる理由です。
仮にすでにがんになっていたとしても、ステージIなら5年生存率90%以上とリスクは低く、早期であれば内視鏡による切除で完治が期待できるのです。
内視鏡検査はいつから受けるべき?
日本では40歳以上を対象に、便潜血検査の集団検診が行われており、内視鏡検査を推奨する年齢としては50歳が一つの目安になっています。
ただし親や兄弟に大腸がん患者がいる場合は、基本よりも早く30〜40代から検査を始めた方がよいでしょう。
家族に複数患者がいるのであれば、家族ががんになった年齢より-10歳を検査を受ける指標にするのもおすすめです。
たとえば父親が55歳で大腸がんと診断されたなら、自分は45歳までに検査を開始する、という具合です。
なお、初回検査で異常がなければ3〜5年ごと、ポリープ切除をしたら1年後再検査、リンチ症候群など高リスクな方は毎年もしくは2年ごとの検査が推奨されています。
当院の「痛くない・苦しくない」大腸カメラ(内視鏡検査)について
そうは言っても、「内視鏡検査は痛い、苦しい」というイメージをお持ちで、なかなか一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
当院では、皆さまに安心して検査を受けていただくため、さまざまな工夫を行っています。
楽に受けられる3つの工夫
当院では、患者様の負担を最小限にするため、以下の3つの工夫を取り入れています。
1. 鎮静剤の使用で、眠っている間に検査
検査は麻酔を投与して行うため、ほとんどの方が眠っている間に検査が終わり、痛みや不快感を全く感じることなく、リラックスして検査を受けていただけます。
実際に当院で大腸カメラを受けていただいた患者様からも「こんなに楽だとは思わなかった」というお声をいただいています。
2.「軸保持短縮法+水浸法」でお腹の張りを軽減
大腸カメラでよくあるお腹の張り感や痛みは、内視鏡によって腸管が伸ばされた時に感じるものです。
そこで当院では自然なままの腸管の状態で、無理に伸ばすことなく内視鏡を挿入する「軸保持短縮法(じくほじたんしゅくほう)」を採用しています。腸管に無理な力を加えないため、内視鏡挿入時の痛みを大幅に減らすことができます。
加えて当院では大腸内視鏡検査で空気の代わりに少量の水を注入して、腸管をふくらませずに内視鏡スコープを挿入する「水浸法(すいしんほう)」という検査法を行っています。
水を使うことでスコープの滑りが良くなるのはもちろん、腸管を無理に伸ばしたりひねったりする必要がなくなるため、検査時の痛みや検査後の腹部膨満感を大幅に軽減できるのです。
当院では高度な技術と最新の設備により、腸管に負担のかけない「軸保持短縮法+水浸法」を組み合わせ、内視鏡検査の負担を大幅に軽減することが可能となりました。
3.検査準備はご自宅でリラックスしながら
大腸カメラでもっとも大変なのが、下剤を飲んで腸の中をきれいにすることです。当院では、この準備をご自宅で行っていただけます。
事前の診察で、下剤の飲み方や食事の注意点などを詳しくご説明し、専用のキットをお渡しします。リラックスできるご自宅で準備をしてからご来院いただけるため、精神的な負担も少ないと好評です。もちろん、院内にもプライバシーに配慮した専用個室をご用意しており、ご希望に合わせてお選びいただけます。
検査結果を「覚えて帰る」ための工夫
当クリニックでは麻酔検査はもちろん、検査後の「麻酔拮抗薬」も“当クリニック負担”で行っています。
「麻酔あり」で大腸カメラを実施した場合、リカバリー室で休憩後に検査後の説明を行いますが「逆行性健忘(検査前の記憶を思い出せなくなること)」が生じることがあります。
一見すると意識は覚醒しており、会話もしっかりできる状態ですが、あとで「医師からの説明を十分に思い出せない・覚えていない」状態になります。これは麻酔薬の効果が残っている場合に起こります。
しっかりと検査を受け、その結果までしっかり聞いて欲しい。それこそが我々医師の務めだと思い、麻酔拮抗薬の処方までを検査治療として実施しています。
麻酔拮抗薬は高価かつ保険適応外であるため「当医院の負担」で行います。精神科薬・眠剤を常用されている方には投与できません。
ポリープはその場で日帰り切除できる
検査の際に切除可能なポリープが見つかった場合は、その場で切除(日帰り手術)が可能です。改めて入院する必要がなく、一度の検査で治療まで完了できるため、患者様の身体的・時間的な負担を大きく軽減できます。
大腸カメラで大切なことは、癌化の危険性がある腫瘍性ポリープだけを確実に発見し切除することです。癌化することのないポリープ(非腫瘍性ポリープ)を治療する意義はありません。
大腸カメラは「ポリープを切除したか」で大きく費用が変わります。つまり「ポリープ切除を行ったか」によって患者様のご負担が大きく変わるということです。無駄な治療を行わないことは患者様の経済的なご負担を減らし、医療費を削減することで世界に誇る国民皆保険制度の持続可能性に寄与すると考えています。
腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープを正確に鑑別し、確実に腫瘍性ポリープのみを切除することは、内視鏡医に求められる必須の技術です。そして、検査あたりの腫瘍性ポリープ発見率(ADR;腺腫発見率)は、内視鏡医が実施する大腸カメラの精度を測る重要な指標とされています。
当クリニックでは「ADR(腺腫発見率)47%」の診察実績を踏まえて、患者様の負担を極限まで減らす大腸カメラ(内視鏡検査)を実施しています。
確かな技術と高い精度の安心な内視鏡検査で、大腸がんで苦しむ方を一人でも減らしたいと心から思っていますので是非お気軽にご相談ください。
米国における2024年推奨値「ADR(腺腫発見率)」:35%
大腸カメラの検査費用は?
症状がある場合や、検診の結果で陽性となった場合の精密検査には、健康保険が適用されます。3割負担の場合の費用目安は以下の通りです。
- 観察のみの場合:5,000円〜7,000円前後
- ポリープを切除した場合:20,000円〜30,000円前後(ポリープの大きさや数によります)
鎮静剤の使用などによる追加費用はいただいておりません。また、ポリープ切除は手術に該当するため、ご加入の医療保険から給付金が受け取れる場合があります。
上記はあくまで目安です。詳細はお気軽にお問い合わせください。
ご家族とご自身の未来のために、専門医ができること
ここまでお読みいただき、大腸がんと遺伝の関係について正しくご理解いただけたでしょうか。
この記事では、大腸がんの発症に遺伝が関わるのはわずか約5%で、大多数は生活習慣などの環境要因によることをお伝えしました。
家族に患者がいる場合でも、リスクは2〜3倍程度で、決して「確実に発症する」わけではありません。そして何より重要なのは、早期発見すれば予防可能だということです。
記事のポイント
- 遺伝性の大腸がんは約5%で、大多数は遺伝ではない
- 家族歴がある場合でも過度に怯える必要はなく、対策で防げる
- もっとも重要なのは早期発見のための内視鏡検査
- 検査は痛みを大幅に軽減できるので、安心して受けられる
- 当院では専門医による苦痛の少ない内視鏡検査を提供している
不安を抱えたまま過ごすより、一歩踏み出して検査を受ければ、その不安は「定期検査で見てもらっているから大丈夫」という安心に変わります。
私たち専門医は、あなたの不安に寄り添い、最新の知識と技術でその不安を解消するお手伝いをいたします。
「大腸カメラは痛い」というイメージをお持ちの方も、当院の内視鏡検査なら眠っている間に検査が終わります。
どんな些細なことでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

