投稿日:2025.10.08 最終更新日:2025.10.09
【ずっとお腹が痛い…】大腸がんで腹痛は起こる?自己判断しないために“癌の傾向”を解説
当院でも「腹痛が長引くんだけど、がんの可能性はありますか…?」とよくご相談いただきます。
実際インターネットにも『長引く腹痛は、大腸がんのサイン!』などの記事もあり、調べるほど不安になってしまうかと思います。
そこで本記事では、そもそも大腸がんで腹痛は起こるのか、様子見で問題ないか?まで詳しく解説していきます。
- 大腸がんで腹痛は起こる?
- 腹痛のタイプは「2種類」ある
- 大腸がんのサインかを見分ける方法
- 不安な場合、どんな検査を受ければいいの?
青木内科・眼科 青木 洋一郎
総合内科専門医/日本消化器病学会専門医/日本内視鏡学会専門医。日本人の2人に1人が「がんになる」と言われる時代に、早期発見の重要性を知ってもらいたいという思いから「痛くない内視鏡検査」を確立。
【そもそも】大腸がんで「腹痛」は起こる?

結論からお伝えすると、大腸がんで腹痛が起こることはあります。がんによって起こる痛みを「癌性疼痛(がんせいとうつう)」と言います。
ただし腹痛の原因は多岐にわたるので、当然ですが「お腹が痛い=大腸がん」と診断することはできません。
がんかどうかの見分け方の前に、まずは「腹痛の種類」について詳しく紹介していきます。
【腹痛は2種類】「機能性」と「器質性」の違い
医師が腹痛の診断をおこなう際、まず以下2つのどちらによる痛みか?を診察します。
- 機能性(きのうせい)の痛み:生活習慣やストレスなど、目に見えない原因で起こる痛み
- 器質性(きしつせい)の痛み:がんやポリープ、炎症など、目に見える異常が原因で起こる痛み
機能性の痛み
「機能性の痛み」とは、“腸の動きや知覚に問題が起きて痛みを感じる状態”を指します。代表的な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- ストレスや生活習慣の乱れ(過敏性腸症候群など)
- 冷え・暴飲暴食による一時的な消化不良
機能性の痛みには急性の痛みと慢性の痛みがあります。
急性の痛みは数日の経過であり、急激に始まり「キューッと差し込むような痛み」、「胃を掴まれたような痛み」、「胃がけいれんするような痛み」などと表現されることが多いです。時に冷汗を伴うような鋭い痛みを感じることもあります。
慢性の痛みは数ヶ月と長い経過で自覚し、急性の痛みと比較し痛みの程度は弱い傾向にあります。痛みは断続的に波打つように強弱があり、ストレスや排便と関連することも多いです。
器質性の痛み
一方、「器質性の痛み」は、胃や腸に潰瘍や癌といった目に見える“形のある異常”が生じていることが原因で起こる痛みです。
大腸がん以外にも、以下のような病気が考えられます。(これらは炎症や自己免疫などが主な原因で、がんとは異なるメカニズムで腹痛を引き起こします)
主な器質性の症状
- 急性虫垂炎
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 炎症(虚血性腸炎・大腸憩室炎 など)
器質性の痛みは、長く続く鈍い痛み(鈍痛)や、断続的に繰り返す痛みであることが多く、基本的に治療しない限り改善しません。
Point:大腸がんによる腹痛は「器質性」
大腸がんによる腹痛は「器質性の痛み」に分類されます。具体的には以下3つのメカニズムで起こります。
- ①:狭窄(腸が狭くなる):
がんが腸の内側を塞ぎ、便やガスが通りにくくなることで、お腹の張りやけいれん性の痛みが生じます。 - ②:穿孔(腸に穴が開く):
がんが進行して腸の壁に穴を開けてしまい、そこから便が漏れ出すと、激しい腹痛(腹膜炎)を引き起こします。 - ③:浸潤(周辺臓器への広がり):
がんが腸の外側にある神経や他の臓器に広がると、持続的な鈍い痛みを感じるようになります。
この痛みは一度発生してしまうと、がんを取り除かない限り完全に消えることはありません。これが長期的に鈍い痛みが続く理由です。
“大腸がんによる腹痛”は進行しているサイン
「大腸がん初期」は無症状のケースがほとんど

まず大前提、大腸がん初期(早期がん)は無症状であるケースがほとんど。つまり腹痛などの痛みはほとんど起こりません。
大腸がんによって腹痛をはじめとする「自覚症状」が出ている場合は、既にがんが進行している可能性が高いと考えられます。
| ステージ | がんの状態 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 早期がん (ステージ0〜Ⅰ) | がんが粘膜または、粘膜下層までにとどまっている | ほぼ無症状 |
| 進行がん (ステージⅡ〜Ⅳ) | がんが筋肉の層より深くに達している | 腹痛、血便、便秘・下痢、便が細くなる、貧血、体重減少 など |
大腸がん初期症状、血便や腹痛は危険?専門医のチェックリスト
「最近、お腹の調子が悪い…」 「便に血が混じっていた気がするけど、病院に行くのは少し怖い…」 インターネットで調べるほど、さまざまな情報が目に入り、かえって心配が募ってしまうこともあるかもしれません。当クリニックでもそんな症状から「最悪、大腸がんというケースもありますか…?」と来院いただく方も少な
「腹痛以外の症状」について
また腹痛以外にも、大腸がんのサインとなる症状はいくつかあります。以下の症状が腹痛と合わせて見られる場合は、特に注意が欠かせません。
- 血便・下血:便に血が混じる、便器が赤くなる
- 便通の異常:便秘と下痢を繰り返す、便秘が続く
- 便が細くなる:がんによって腸が狭くなることが原因
- 残便感:便を出し切った感じがしない
- お腹の張り(腹部膨満感)
- 貧血、めまい、立ちくらみ:がんからの出血が続くことで起こる
- 原因不明の体重減少
これらの症状が少しでも当てはまる方は、消化器内科を受診してください。特に「血便」や「原因不明の体重減少」はがんの予兆である可能性が高いですので、自己判断せずすぐに受診することを推奨します。
【院長コラム】早期大腸がんなら“ほぼ完治可能”

大腸がんは日本の死因の上位を占める疾患ではありますが、早期発見して適切な治療を行えば、9割以上完治することが可能です。
これはなぜかというと、大腸がんは「大腸ポリープ→大腸がん」の流れで進行します。つまりポリープの段階で切除してしまえば、がん化する前に切除できます。また早期ステージであればこちらも完全に切除することが可能なのです。
それでも日本における死因が高いのは、決して日本の医療レベルが低いからではありません。そもそも日本人が「大腸検診を受けないこと」こそが、大腸がんによる死因が多い要因のひとつとなっているのです。
ですので特に50歳以上の方には、定期的な大腸カメラによる内視鏡検査を受診いただきたいと思っています。
当院の「痛くない・苦しくない」大腸カメラについて

「症状は気になるけど、大腸カメラは痛い・苦しいって聞くし…」
大腸がんの診断に欠かせない大腸内視鏡検査(大腸カメラ)ですが、過去に辛い経験をされた方や、検査に対して抵抗感を持つ方は少なくありません。
当院では、そのような患者様の不安や苦痛を少しでも和らげるため、少しでも「痛くない・苦しくない」内視鏡検査が行える工夫を行っています。
検査を楽に受けられる工夫
1. 麻酔で眠っている間に検査終了
検査は麻酔を投与して行うため、ほとんどの方が眠っている間に検査が終わり、痛みや不快感を全く感じることなく、リラックスして検査を受けていただけます。
実際に当院で大腸カメラを受けていただいた患者様からも「こんなに楽だとは思わなかった」というお声をいただいています。
2. 「軸保持短縮法+水浸法」による高度な技術で、検査後のお腹の張りを軽減
大腸カメラでよくあるお腹の張り感や痛みは、内視鏡によって腸管が伸ばされた時に感じるものです。
そこで当院では自然なままの腸管の状態で、無理に伸ばすことなく内視鏡を挿入する「軸保持短縮法(じくほじたんしゅくほう)」を採用しています。腸管に無理な力を加えないため、内視鏡挿入時の痛みを大幅に減らすことができます。
加えて当院では大腸内視鏡検査で空気の代わりに少量の水を注入して、腸管をふくらませずに内視鏡スコープを挿入する「水浸法(すいしんほう)」という検査法を行っています。
水を使うことでスコープの滑りが良くなるのはもちろん、腸管を無理に伸ばしたりひねったりする必要がなくなるため、検査時の痛みや検査後の腹部膨満感を大幅に軽減できるのです。
当院では高度な技術と最新の設備により、腸管に負担のかけない「軸保持短縮法+水浸法」を組み合わせ、内視鏡検査の負担を大幅に軽減することが可能となりました。
3.検査前の準備は「ご自宅」でリラックスしながら
大腸カメラでもっとも大変なのが、下剤を飲んで腸の中をきれいにすることです。当院では、この準備をご自宅で行っていただけます。
事前の診察で、下剤の飲み方や食事の注意点などを詳しくご説明し、専用のキットをお渡しします。リラックスできるご自宅で準備をしてからご来院いただけるため、精神的な負担も少ないと好評です。もちろん、院内にもプライバシーに配慮した専用個室をご用意しており、ご希望に合わせてお選びいただけます。
検査結果をしっかり「覚えて帰る」ための工夫
当クリニックでは麻酔検査はもちろん、検査後の「麻酔拮抗薬」も“当クリニック負担”で行っています。
「麻酔あり」で大腸カメラを実施した場合、リカバリー室で休憩後に検査後の説明を行いますが「逆行性健忘(検査前の記憶を思い出せなくなること)」が生じることがあります。
一見すると意識は覚醒しており、会話もしっかりできる状態ですが、あとで「医師からの説明を十分に思い出せない・覚えていない」状態になります。これは麻酔薬の効果が残っている場合に起こります。
しっかりと検査を受け、その結果までしっかり聞いて欲しい。それこそが我々医師の務めだと思い、麻酔拮抗薬の処方までを検査治療として実施しています。
麻酔拮抗薬は高価かつ保険適応外であるため「当医院の負担」で行います。精神科薬・眠剤を常用されている方には投与できません。
ポリープが見つかった場合、その場で日帰り切除も可能です
検査の際に切除可能なポリープが見つかった場合は、その場で切除(日帰り手術)が可能です。改めて入院する必要がなく、一度の検査で治療まで完了できるため、患者様の身体的・時間的な負担を大きく軽減できます。
【院長コラム】切除すべき“腫瘍性ポリープ”だけを切除することが必要

大腸カメラで大切なことは、癌化の危険性がある腫瘍性ポリープだけを確実に発見し切除することです。癌化することのないポリープ(非腫瘍性ポリープ)を治療する意義はありません。
大腸カメラは「ポリープを切除したか」で大きく費用が変わります。つまり「ポリープ切除を行ったか」によって患者様のご負担が大きく変わるということです。無駄な治療を行わないことは患者様の経済的なご負担を減らし、医療費を削減することで世界に誇る国民皆保険制度の持続可能性に寄与すると考えています。
腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープを正確に鑑別し、確実に腫瘍性ポリープのみを切除することは、内視鏡医に求められる必須の技術です。そして、検査あたりの腫瘍性ポリープ発見率(ADR;腺腫発見率)は、内視鏡医が実施する大腸カメラの精度を測る重要な指標とされています。
当クリニックでは「ADR(腺腫発見率)47%」の診察実績を踏まえて、患者様の負担を極限まで減らす大腸カメラ(内視鏡検査)を実施しています。
確かな技術と高い精度の安心な内視鏡検査で、大腸がんで苦しむ方を一人でも減らしたいと心から思っていますので是非お気軽にご相談ください。
米国における2024年推奨値「ADR(腺腫発見率)」:35%
内視鏡検査(大腸カメラ)の費用
症状がある場合や、検診の結果で陽性となった場合の精密検査には、健康保険が適用されます。3割負担の場合の費用目安は以下の通りです。
- 観察のみの場合:5,000円〜7,000円前後
- ポリープを切除した場合:20,000円〜30,000円前後(ポリープの大きさや数によります)
鎮静剤の使用などによる追加費用はいただいておりません。また、ポリープ切除は手術に該当するため、ご加入の医療保険から給付金が受け取れる場合があります。
※上記はあくまで目安です。詳細はお気軽にお問い合わせください。
がんによる腹痛が起こる前に検査を|早期発見が最も重要!
ここまで、大腸がんによる腹痛の特徴や、痛みの種類の見分け方について解説してきました。
腹痛には、目に見える異常が原因の「器質性」と、そうでない「機能性」の2種類があり、大腸がんの痛みは前者に分類されること、そして痛みなどの症状が出ている場合は、すでにがんが進行している可能性があることをご理解いただけたかと思います。
この記事で最もお伝えしたかったのは、「腹痛を自己判断で放置せず、不安な時は専門家に相談することが、ご自身の健康を守るための最も確実な手段」ということです。
この記事のポイント
- 腹痛の原因は、目に見える異常がある「器質性」と、見えない「機能性」に大別される。
- 大腸がんによる腹痛は「器質性」で、慢性的・持続的な痛みが特徴。
- 痛みなどの症状が出た時点で、がんは進行している可能性がある。
- 大腸がんは早期発見できれば、95%以上が完治を目指せる。
- 鎮静剤や水浸法など、苦痛の少ない内視鏡検査がある。
インターネット上の情報だけで一喜一憂するのではなく、一度は専門医に相談してください。検査を受けて「何もなかった」と確認できれば、それだけで安心して毎日を過ごせるようになります。
どんな些細なことでも構いませんので、まずはお気軽にご相談ください。

