投稿日:2025.09.12 最終更新日:2025.09.12
大腸がんの便の色は?血便などの“便からわかる危険信号”を解説!

トイレで便の色がいつもと違うことに気づき、「これって血便?もしかしたら大腸がんのサイン…?」と不安に思っていませんか。
便の色の変化は体からの重要なサインかもしれず、ご心配されるのは当然のことです。しかし、すべての色の変化が危険なわけではありません。
結論からお伝えすると、危険な便の色には特徴があり、それを知ることが不安解消の第一歩です。
この記事では、これまで内視鏡検査を1万件以上担当した私、青木が、大腸がんと便の色の関係や、危険なサインの見分けかたについて、実際の写真を交えながら詳しく解説していきます!
この記事を読めば、こんな悩みが解決します!
- 危険な便の色(赤・黒・白)と安全な色の見分けかた
- 大腸がんのサインとなる便の具体的な特徴
- 食事や薬など、病気以外の原因
- すぐに病院へ行くべきかどうかの判断基準
ご自身の状況を正しく理解し、不要な心配を解消するために、ぜひ最後までご覧ください。

青木内科・眼科 青木 洋一郎
総合内科専門医/日本消化器病学会専門医/日本内視鏡学会専門医。日本人の2人に1人が「がんになる」と言われる時代に、早期発見の重要性を知ってもらいたいという思いから「痛くない内視鏡検査」を確立。
まずはセルフチェック|健康な便の色・形を知ろう
異常について知る前に、まずは健康な便がどのようなものかを知ることが大切です。 この章では、色や形といった観点から「正常な便」の基準を解説します。
健康な便の色の目安は「黄褐色〜茶褐色」
理想的な便の色は、胆汁に含まれるビリルビンという色素に由来する「黄褐色〜茶褐色」です。
私たちが食事をすると、食べ物は胃や十二指腸で消化され、その過程で肝臓から分泌される胆汁と混ざり合います。この胆汁の色素が、便の色を決定づけます。腸内の環境や食べ物によって多少の色調の変化はありますが、この黄褐色〜茶褐色の範囲内であれば、基本的には健康な状態と考えてよいでしょう。
形や硬さもチェック!ブリストルスケールで見る「理想の便」は?
便の状態を客観的に示す国際的な指標として「ブリストル便形状スケール」があります。これは、便の形と硬さを7つのタイプに分類したものです。
- タイプ1:コロコロした硬い便
- タイプ2:ソーセージ状で硬い便
- タイプ3:表面にひび割れのあるソーセージ状の便
- タイプ4:滑らかで柔らかいソーセージ状(バナナ状)の便
- タイプ5:はっきりとした境界のある柔らかい塊
- タイプ6:境界が不明瞭な泥状の便
- タイプ7:固形物のない水様便
この中で、タイプ4がもっとも理想的な状態とされています。タイプ1や2は便秘気味、タイプ6や7は下痢気味の状態です。色だけでなく、形や硬さも日々の健康状態を知るための重要なバロメーターになります。
【院長コラム】ブリストルスケールって何?
ブリストル・スケールとは、1997年に英国のブリストル大学で提唱された、便の硬さや形状を7段階に分類する国際的な指標です。
ブリストルスケールは便秘や下痢の状態を診断・評価するのに用いられていて、数字が小さいほど硬い便(便秘)、数字が大きいほど水っぽい便(下痢)を指します。
血便は大丈夫?“大腸がんの可能性”がある危険な便の色
ここでは、特に注意が必要な「危険な便の色」について、それぞれどのような病気の可能性があるのかを解説します。
赤い便(血便・鮮血便)は大腸からの出血サイン
便の表面に鮮血が付着していたり、排便後に便器が赤く染まっていたりする場合、「鮮血便(せんけつべん)」と呼ばれます。これは、肛門に近い部分、主に大腸からの出血を示唆しています。
もっとも多い原因は痔(いぼ痔や切れ痔)ですが、「どうせ痔だろう」と自己判断してしまうのは大変危険です。大腸がんや、がん化する可能性のある大腸ポリープが原因で出血しているケースも少なくありません。
院長からのワンポイント解説
臨床の現場では、ご自身で「痔からの出血だ」と思い込んでいた方に大腸内視鏡検査をおこなったところ、大腸がんやポリープが見つかるというケースが非常に多くあります。排便後、便器の中を一度振り返る習慣をつけることが、病気の早期発見につながる大切な第一歩です。
黒い便(下血・タール便)は“胃や十二指腸”からの危険信号
黒く、ドロっとしたコールタールのような便は「下血」や「タール便」と呼ばれ、胃や十二指腸といった上部消化管からの出血が疑われる危険なサインです。
食道、胃、十二指腸などで出血が起こると、血液が胃酸と混ざり、腸内を進む過程で黒く変色します。そのため、タール便が出た場合は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、あるいは胃がんといった病気の可能性があります。
院長からのワンポイント解説
黒い便が出た場合、すでに出血によって貧血が進んでいることも少なくありません。
立ちくらみや息切れといった症状を伴う場合は、特に緊急性が高いと考えられます。放置せず、速やかに消化器内科を受診してください。
白〜灰色の便は「肝臓や胆のう」の病気の可能性も
便が白っぽかったり、灰色がかっていたりする場合、便の色素の元である胆汁が十分に分泌されていないか、あるいは胆汁の通り道(胆管)が詰まっている可能性があります。
この状態は、胆石症、胆管がん、肝炎など、肝臓や胆のう、膵臓の病気で起こることがあります。ただし、健康診断などで使用されるバリウムを飲んだ後にも、便は白くなります。バリウム検査の記憶がないのに白い便が出た場合は、注意が必要です。
結論:大腸がんに特有の便の色はないが出血サインを見逃さないで
「大腸がんになると、血便は出ますか?」これは、私たちが日常の診療でもっともよく受ける質問の一つです。
結論からいうと、大腸がんに特有の便の色というものはありません。 大腸がんのもっとも重要なサインは、がんの表面からじわじわと出血することによる「血便」です。しかし、出血の量や場所によって、便の色は鮮やかな赤色に見えたり、少し黒っぽく見えたりとさまざまです。
さらに重要なのは、早期の大腸がんはほとんどが無症状であるということです。目に見える血便などのサインが現れるのは、がんがある程度進行してからというケースも少なくありません。 だからこそ、症状がない段階でも定期的に検診を受けることが、何よりも大切なのです。
心配ないケースも|食べ物や薬が原因の場合
便の色が変わったからといって、必ずしも病気が原因とは限りません。 私たちが普段口にする食べ物や薬によっても、便の色は変化します。この章では、病気以外の主な原因について解説します。
食べ物や飲み物による一時的な色の変化
特定の食品や飲料を摂取すると、その色素が便の色に影響を与えることがあります。 昨日の食事を少し思い出してみてください。以下のようなものを召し上がっていませんか?
便の色 | 原因となりうる食品・飲料の例 |
---|---|
赤っぽい | トマト、スイカ、赤ワイン、ビーツ |
黒っぽい | イカ墨、ひじき、海苔、ブルーベリー |
緑っぽい | 緑黄色野菜(ほうれん草など)、緑色の着色料 |
これらの場合は一時的なもので、その食べ物を消化し終えれば元の便の色に戻ることがほとんどです。
服用中の薬やサプリメントの影響
服用中の薬やサプリメントが原因で、便の色が変わることもあります。
たとえば、貧血の治療で使われる鉄剤を服用すると、便は黒っぽくなります。また、一部の胃薬や風邪薬、サプリメントも便の色に影響を与えることがあります。何かお薬を飲み始めてから便の色が変わったという場合は、その薬が原因かもしれません。
便と合わせて確認したい「大腸がんの初期症状」
大腸がんは、便の色以外にもさまざまなサインを出すことがあります。早期発見のためには、これらの症状にも気を配ることが重要です。 ここでは、便の色以外に注意すべき大腸がんの主な初期症状を解説します。
便が細くなる
がんが腸内にできると、便の通り道が狭くなり、結果として便が鉛筆のように細くなることがあります。急に便が細くなった、あるいは細い便しか出なくなったという場合は、注意が必要です。
下痢と便秘を繰り返す
がんが腸の動きを妨げることで、便通が不安定になることがあります。これまで快便だったのに、急に下痢と便秘を繰り返すようになったら、それは腸からのサインかもしれません。
残便感やお腹の張りがある
排便後も便が残っているような感じ(残便感)が続いたり、お腹が張って苦しい感じ(腹部膨満感)がしたりするのも、症状の一つです。がんが腸を塞ぎ、便やガスがスムーズに排泄されなくなることで起こります。
腹痛・貧血・体重減少もサイン
がんが進行すると、持続的な腹痛や、出血による貧血(めまい、ふらつき)、そして特別な理由もないのに体重が急に減少するといった全身症状が現れることがあります。1ヶ月で3〜4kgといった急激な体重減少は、要注意のサインです。
“大腸がんの不安”を解消する「大腸カメラ」とは
ここまでの解説で、ご自身の症状に当てはまる点があり、不安を感じているかたもいらっしゃるかもしれません。 その不安をもっとも確実かつ迅速に解消する方法は、専門医による大腸内視鏡検査(大腸カメラ)です。
この章では、なぜ検査が重要なのか、そして当院だからこそ提供できる「安心の検査」について詳しく解説します。
なぜ症状がなくても大腸カメラ(内視鏡検査)は必要なのか?
健康診断の便潜血検査で「陽性」と判定された場合、それは「便に血液が混ざっている」というサインであり、精密検査が必要です。安易に痔核のせいにしたり、2回中1回だけの陽性だから大丈夫などと自己判断してはいけません。必ず精密検査を受けましょう。
大腸内視鏡検査は、カメラで直接大腸の内部を観察できるため、がんやポリープを早期に発見するためのもっとも有効な手段です。もし、がんになる可能性のあるポリープが見つかった場合、その場で切除することもできます。
つまり、大腸内視鏡検査は、がんの早期発見だけでなく、予防にも繋がる非常に重要な検査なのです。
当院の「痛くない・苦しくない」大腸内視鏡について
- 症状は気になるけれど、大腸カメラ(内視鏡検査)はどうしても怖い…
- 過去にやったことがあるけど、痛すぎてもう2度とやりたくない…
多くの方がそう感じています。検査への不安が、受診への大きなハードルになっていることも少なくありません。
当院では、がんやその他の疾患の発見率はもちろん、そもそも「痛くない・苦しくない検査」が行えるよう工夫を行っています。
楽に受けられる工夫
当院では、患者様の負担を最小限にするため、以下の3つの工夫を取り入れています。
麻酔使用で、眠っている間に検査
検査は麻酔を投与して行うため、ほとんどの方がウトウトと眠っている間に検査が終わり、痛みや不快感を全く感じることなく、リラックスして検査を受けていただけます。
「以前、他の病院で受けた検査が辛かった」という方からも、「こんなに楽だとは思なかった」というお声をいただいています。
「軸保持短縮法+水浸法」による高度な技術で、検査後のお腹の張りを軽減
大腸カメラ検査中の張り感や痛みは、内視鏡によって腸管が伸ばされた時に出現します。自然なままの腸管の状態で、無理に伸ばすことなく内視鏡を挿入する方法を「軸保持短縮法(じくほじたんしゅくほう」と呼びます。腸管に無理な力を加えないため、内視鏡挿入時の痛みを大幅に減らせる反面、高度な技術を要し技術習得に大変時間がかかります。
一般的な検査では空気や体への吸収が速い炭酸ガス(CO2)を使用して腸内を膨らませることが一般的ですが、当院では大腸内視鏡検査で空気の代わりに少量の水を注入して、腸管をふくらませずに内視鏡スコープを挿入する「水浸法(すいしんほう)」という検査法を行っています。
空気の代わりに水を使うことでスコープの滑りが良くなるのはもちろん、腸管を無理に伸ばしたりひねったりする必要がなくなるため、検査時の痛みや検査後の腹部膨満感を大幅に軽減できるという特徴があります。
当院では高度な技術と最新の設備により、腸管に負担のかけない「軸保持短縮法+水浸法」を組み合わせ、内視鏡検査の負担を大幅に軽減することが可能となりました。
検査準備は“自宅”でOK!当クリニックの流れについて
大腸カメラは基本的に「日帰り」が可能ですが、当クリニックでは大腸カメラの検査準備をご自宅で実施いただける工夫をしています。
事前診察
インターネットで検査の御予約を頂いたら一度来院いただき、医師が診察します。検査について詳しく説明し、日程を決定します。
検査前日
消化の良い食事をとっていただき、処方された下剤を服用します。
検査当日
朝、ご自宅で腸をきれいにするための洗浄液(下剤)を飲んでいただきます。便がきれいになったら、予約時間に合わせてご来院ください。
一般的には、検査当日に来院いただき、腸洗浄を行いますが、当クリニックでは検査準備をご自宅ですべて完結いただけるキットのお渡しと、それを実施いただける事前説明を行っています。
これは「朝から何時間も病院に拘束される」という、患者様の“精神的負担を軽減させたい”という想いからこのオペレーション体制で検査を行っています。
ご不明点があれば「事前診察」の際に詳しくご説明しますので、お気軽にご相談ください。
内視鏡検査(大腸カメラ)
ウトウトと眠っているような状態で、15分〜30分ほどで検査は終了します。
検査後
リカバリールームで30分〜1時間ほどお休みいただいた後、医師から検査結果の説明があります。
「ちゃんと目覚める」も大切と考える|当クリニックの検査後について
当クリニックでは麻酔検査はもちろん、検査後「麻酔拮抗薬」も“当クリニック負担”で行っています。
「麻酔あり」で大腸カメラを実施した場合、リカバリー室で休憩後に検査後の説明を行いますが「逆行性健忘」が生じることがあります。
一見すると意識は覚醒しており、会話もしっかりできる状態ですが、あとで「医師からの説明を十分に思い出せない・覚えていない」状態になることを逆行性健忘と呼び、麻酔薬の効果が残っている場合に起こります。
しっかりと検査を受け、その結果までしっかり聞いて欲しい。それこそが我々医師の務めだと思い、麻酔拮抗薬の処方までを検査治療として実施しています。
(麻酔拮抗薬は高価かつ保険適応外であるため医師の判断にて医院の負担で行います。精神科薬・眠剤を常用されている方には投与できません。)
検査の具体的な流れと費用
当院での大腸内視鏡検査は、以下の流れで進みます。
- 検査予約:クリニックホームページから、大腸カメラ予約を行い、続いて大腸内視鏡検査問診同意を行います。
- 事前診察:クリニックホームページから、大腸カメラ事前診察予約を行い1週間前までに受診します。
- 検査準備:3日前から下剤の服用、検査前日は消化の良い食事を摂っていただきます。
- 検査当日:検査時間15分前に来院。15〜20分ほどで検査は終了します。
- 結果説明:検査後、リカバリールームで少しお休みいただいた後、医師から画像をお見せしながら結果を説明します。
費用については、保険適用(3割負担)の場合、観察のみであれば6,000円程度、ポリープを切除した場合でも20,000円〜30,000円程度が目安となります。
便の色の変化は体からのサイン。不安な時は専門医に相談を
この記事では、便の色の変化が大腸がんやその他の消化器疾患のサインとなり得ること、そしてご自身の便の状態を正しく理解するためのポイントを解説してきました。特に、赤や黒の便は消化管からの出血を示唆する重要なサインであり、自己判断せずに専門医に相談することの重要性をご理解いただけたかと思います。
この記事のポイント
- 健康な便の目安は「黄褐色〜茶褐色」
- 赤い便や黒い便は消化管からの出血サインの可能性
- 早期の大腸がんは無症状なことが多く、検診が重要
- 食べ物や薬で便の色が変わることもあるため、冷静な観察が必要
便の色の変化という体からの小さなサインを見逃さず、不安を抱えつづけるよりも、一度専門医に相談することが、心と体の健康を守るためのもっとも確実な一歩です。
当院では、内視鏡検査1万件以上の実績を踏まえて、苦痛の少ない大腸内視鏡検査をおこなっています。
少しでも気になる症状があれば、一人で悩まず、ぜひ一度私たちにご相談ください。